毎日、たくさんの方に「ピアノ日和」を読んで頂き、ありがとうございます。
感動した記事がありました。
ピアニスト山本乃弘さんのこの記事。
以下、引用です。
今年の春にこの審査のご依頼をいただいた時、こうした機会を与えていただき有り難いことながら、これは大変だと思いました。
私にとってピティナの特級は、昨年初めて一次予選を審査させていただいたのに続いての機会でしたが、私の審査の経験として、これまでで最もレベルが高く規模の大きな機会でした。
自分より巧く弾ける人たちの、想いのこもったものすごい演奏をたくさん受け止めながら、コメントをお伝えすることになる…
参加される皆さんと、そこで演奏される作品の作曲家に失礼のないようにしたいと思いました。
ちょうどステイホームで時間が確保できたので、4月から時間をかけて、三次とファイナルの選択肢になっていた32曲のコンチェルトを、7月に二次の進出者と曲目が発表されてからは、24名の進出者の二次のプログラム全曲を、やった事があるものもないものも、最低一回ずつはどれも自分で実際に弾いて音を出しながら楽譜を読みました。
そうしながら、自分だったらどんな風に音を作っていくだろうかとか、表現しようとするときにこんな難題をクリアしなければならないんだなとか、これは難しくて自分は人前じゃ弾けないな、すごいなぁ、とかいう事を、一通り体感してから審査に臨みました。
もちろん、審査中は楽譜にかじりついて重箱の隅をつっつくような聴き方はしませんし、もっと大きな、その人がどんな事を感じてどんな次元で音楽をしているのか、その人の今から更に素敵な音楽に近づいていくためにはどんな情報が有効に思うか、といった事を焦点に聴かせていただくのですが、凡人として、音楽仲間として、音楽好きな一人の聴衆としての心の準備が自分には必要でした。
審査の度に毎回これほどの準備時間が確保できるわけではないのですが、ステイホームの今しかできない事として、私は私でこの期間を楽しみました。
その全曲の楽譜がこちら。
特級コンチェルト課題と24名の二次予選プログラムの楽譜たち(一部電子楽譜も使用したので、写っていないものもあります)。
最近は楽譜も電子化が進んで便利になりましたが、自分は目が疲れやすいのと、やはり形のない音楽の存在を、重さのあるものとして少しでも感じられる気がして、印刷された楽譜が好きです。
こうしてこれから聴くことになる曲たちの楽譜を並べ弾いて、実際抱えて持ってみると、これだけの音楽が命がけで記されてきて、それがまたすごい人たちの手でその日のその瞬間にだけ生み出されては消え、でも誰かの心に残っていくんだなぁと、しみじみ考えてしまいました。
当たり前といえば当たり前の事かもしれないけれど、このご時世に改めて感じる、やっぱりものすごく素敵な、クラシック音楽のかけがえのない力。僕にとっては、やはり生きていく上での心の支えとして必要です。
3日間に渡って会場の客席に身を置きながら、今回こうして心を重ねる準備ができて良かったなと思いました。
なかなか演奏会を開催したり聴きに行ったりにも試行錯誤や迷いを抱える情勢の今、私自身実際に半年間他の人の生音を聴くことができずにきた中で、これほどの渾身の演奏をこんなにもたくさん聴かせていただき、お一人お一人の演奏が私の心には深く染み込み、刻まれました。
ご一緒した佐藤彦大先生もおっしゃっていましたが、これほど想いのこもった演奏に採点するのは断腸の想いで、鉛筆の音を立てるのも申し訳なく思いながら聴いていました。
--以上です。
こんな審査員の方もあるのだと思いました。
私も、レッスンで扱う曲は、事前に楽譜を開いて弾くようにしています。
特にバッハは、再度分析をして、レッスンに臨みます。
「以前弾いた曲」でなく「良さそうな教則本」でなく、レッスンの前に実際に弾くことで、新たな指使いの提案、曲の構成、良さなど気づくことがたくさんあります。
中秋の名月。
夜が長くなります。
秋の夜の過ごし方の1つに、ピアノがあったら。
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